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暮らしと贈りもの

空間浄化とは何をすることか。塩と水と香りで部屋を整える

部屋の空気が重いと感じたとき、何をすれば変わるのか。塩を置く、水で拭く、香を焚く。この三つは、実はどれも同じことをしていると私は思っています。汚れではなく、目に見えない気配のようなものを相手にしているのです。

浄化とは、もともと汚れや穢れを取り除いて、清らかにすることを指す言葉です。暮らしの中で「部屋を浄化する」と言うときは、塩や水、香り、音、風を使って、その場の空気を入れ替え、整えることを指すのがふつうです。

面白いのは、「浄化」という言い方より、「清める」や「祓う」という言葉のほうが、日本ではずっと古くから使われてきた点です。

「空気が重い」と感じたら、まずすること

「空気が重い」と感じたときに、私がまずすすめたいのは、香を焚くことではありません。窓を開けて空気を入れ替えること、掃除機をかけること、床や棚に置きっぱなしになっているものを減らすことです。これだけで、部屋の印象はずいぶん変わります。塩や香りは、そのあとに続けるものだと私は考えています。物が減って空気が動くようになった部屋でなら、塩を置いたり香を焚いたりする意味も、はっきり感じやすくなります。

塩を置くという習わし

玄関やお店の入り口に塩を盛る風習は、邪気を祓うものと古くから考えられてきました。かたちや由来の細かいところは、盛り塩そのものを扱った別の記事に書きました。

盛り塩は放っておくと、湿気を吸って形を崩していきます。だから、気づいたときに取り替えることになる。取り替えるたびにその場所を見て、汚れていれば拭く。それだけでも、玄関に意識を戻す時間になります。塩そのものより、この見て取り替えるという動作のほうが、空間にとっては大事なのかもしれません。

水で整える

神社の手水舎で手を洗うように、水には穢れを流す力があると言われてきました。朝いちばんに、玄関のたたきを雑巾で拭く。地味なことですが、目に見える汚れと、目に見えない気分が、一緒に片づくところが水のいいところだと思います。夏場に打ち水をするのも、涼をとる実用的な工夫であると同時に、同じ考え方の延長にあります。

香りを部屋に通わせる

お香を作っている私にとって、いちばん近いのはこの方法です。窓を少し開けて、香に火をつけ、煙が部屋を巡るのを待つ。燃え尽きたら、もう一度しっかり換気する。火のつけ方はこちらに書きました。

焚き終えたあと、部屋を出るときには、袖や髪にひとすじ香りが残っています。

香りの選び方

香りにも、天然の香木や樹脂、ハーブの粉で作ったものと、香りだけを人工的に似せて作ったものがあります。どちらが正しいというより、燃やして煙を吸うものなので、何でできているかを確かめて選ぶのがいいと私は考えています。産地や素材がはっきりしているものを選ぶ人も多いようです。焚いてみると、煙の重さや消えるまでの時間にも違いが出てきます。好みに合うものは、少しずつ試して見つけていくことになります。

音と風、いちばん簡単な整え方

手を一回打つ。風鈴を吊るす。どちらも古くから、空間を切り替える行為とされてきました。神社で柏手を打つのも、同じ考え方の延長にあると言われています。理屈より先に、体が「区切りがついた」と感じる。そのための音なのだと思います。

いちばん簡単なのは、窓を開けることです。朝起きて、対角にある窓を開けると風の通り道ができます。特別な道具も、覚える手順もいりません。曇った窓ガラスが澄んでいくのを見ているだけでも、空気が動いているのがわかります。

毎日、浄化しないといけないのか

塩を替え、水で拭き、香を焚く。これを毎日しなければならない、ということはないと私は思っています。空気が重いと感じたときや、来客の前後、季節の変わり目など、気になったタイミングで行えば十分です。習慣にしてもいいですし、思い出したときだけでもいいはずです。毎日でないと意味がない、という考え方のほうが、かえって続かなくなる原因になる気がします。

五つのうち、ひとつでいい

塩、水、香り、音、風と書いてきましたが、毎日すべてを行う必要はありません。どれか一つを、気が向いたときに続けるだけで十分だと私は思っています。組み合わせて行う人もいますが、それで何かが強まるという話でもありません。自分の生活に合うものを、ひとつかふたつ選べば十分です。

香司として、続けている理由

塩や水や香りで、本当に何かが浄化されているのか。そこを私が言い切ることはできません。研究でわかっているのは、換気や清掃が空気環境を実際に良くするということまでです。「部屋が浄化された」と感じるかどうかは、そのあとの、もっと個人的な感覚の話になってくるのだと思います。

それでも、この習わしが長く続いてきたのには理由があるのだろうと思います。窓を少しだけ開けて、香を一本灯してみると、部屋の空気は変わって見えるはずです。塩を置き、水で拭き、香を焚く。ひとつずつは小さな行為ですが、続けていくうちに、部屋との付き合い方そのものが変わってきます。

お清めという言葉の由来はこちらにも書きました。私が作っているお香はこちらにあります。

気になる香りを、暮らしのそばに。

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